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Angler's Notes from Southern Alps

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2009年 10月 31日

10月30日 ディディモ・チェック

10月30日 ディディモ・チェック_e0098148_1043945.jpg


南島、テ・アナウの近くのWaiau Riverと、その支流のMararoa River。
ここでニュージーランド国内で初めてディディモ(通称:Didymo)が見つかってから、もうすぐ5年になる。
侵略性の高いこの北米からやって来た藻(正確には、ケイ藻類)は、あっというまに南島全土に広がり、川底をその黄土色のブヨブヨ、グニョグニョしたもので覆いつくした。

Mararoa River は、それは素晴らしい川だった。
澄み切った水がブナの森と牧場の中を流れ、そこに棲むマス達も実に美しい、コンディション抜群のマス達ばかりだった。特にこの川独特の幅広のレインボーのファイトは、ちょっと特別だった。
でもディディモの侵略により生息環境は変化し、去年あたりから魚の数も、コンディションもグンと低下したように感じていたものだから、果たして今年はどうなのだろう?と、あえてディディモに侵されたこの川を訪れることにしたのが、昨日のこと。

すっきりと晴天。車の外気温計は、17℃を差していた。
前日までの雨で周囲の川は若干の高水位ながら、湖を上流に持つこの川の水位は基本的に上下動が他と比較して小さいので、通常水位を保っていた。実はこの、水位が安定している、ということが、ディディモにとっては好都合らしい。

準備を済ませて川に下りてすぐ、NZの釣りを統括するFish&Gameの係官が近づいてきた。ライセンスのチェックである。よく、釣り場ではある光景。
聞けばどうやら、ディディモの状況を調査しているとのこと。川の水を採取して、その中に含まれるディディモの胞子(肉眼では見えない)などを測定するらしい。良い機会だったので、魚の数やコンディションの低下、という自分が感じていたことについて訊いてみたら、どうやらそれは本当らしいことがわかった。
昨シーズンにFish&Gameは「ドリフト・ダイブ」という調査をこの川で行なった。ちなみに数人のダイバーが川を下りつつ、魚の数や大きさを測定していく調査方法のことだ。
その結果、ディディモがこの川に入ってからというもの、確実に魚の数は減少してきていて、かつ魚のコンディションも低下してきている、ということが明らかになっている、とのこと。それはこのWaiau River水系に限ったことではないこと、などもわかっているらしい。
私:「やっぱりね。そう感じていたから、今日はチェックしにきたんだよ」
係官:「うん。残念だけどね。・・・・よく釣りには出かけるの?」
私:「うん。多いよ」
係官:「そうか。これからも何か気がついたことがあったら、教えてくれよ。」
私:「もちろん。じゃ、頑張って」
残念な事実の確認がとれて、少し寂しく感じてしまったのは、言うまでもない。

気を取り直してまずは魚の顔を見ようと川に足を踏み入れた直後に、
係官:「あ、ちょっと待って。ウェーディング・シューズ見せて」
私:「ああ、はいどうぞ」
と靴底を見せたら、安心して去っていった。どうやらちゃんとチェック項目になっているようで、少し安心した。旅行者の中には、フェルト・ソールが禁止されていることも、あるいはディディモのことすら知らない人々も少なくない。

10月30日 ディディモ・チェック_e0098148_10292198.jpg 実際のディディモの状態は、というと、春先や冬の間の大水でかなりが流されてしまっているので、一見それほど目立たない。でも、岸辺の比較的流れがゆっくりの場所や、何か「引っかかるもの」がある場所には、しっかりとコロニーを作って存在していた。(左の写真)

これがシーズンが進んでいくにつれて、川底の大部分を覆いつくすようになる。そしてコロニーから剥離した無数のディディモの固まりが、汚らしく川を流れ、汚していくことになる。
それが避けられない、毎年繰り返される光景なのかと思うと、心が痛む。



10月30日 ディディモ・チェック_e0098148_1036973.jpgさて、釣りの方はというと、これが悪くはなかった。

魚達は反応良く、主にニンフに飛びついてきて、昔のような幅広レインボーは釣れないまでも、コンディションも上々だった。
釣れる魚は、レインボー6割、ブラウン4割くらい。でもこの比率は、川のどの区間を釣るかで変化する。
レインボーの最大は56cm。
ブラウンの最大は59.5cm。惜しい!泣き2尺。
ブラウンは他にも59cmが2尾。しかもどのブラウンも驚くほどコンディションが良くて、ファイトの激しさはレインボー達に一歩も引けをとらなかった。しまいにはドライ(パラ・アダムス)でも釣れてしまったから、活性もずいぶん高かったようだ。これはうれしい誤算といえば、まあ誤算。
5年前までは、これが当たり前の川ではあったから、少しその当時を思い出させてもらった。

たった4時間ほどの釣りだったけれど、ディディモの状態も、魚の状態も、そしてこの先どんな風になっていくかという予想もつけられたので、この日の目的は十分に果たせた。「予想」は、残念ながら良いものではないけれど・・・・。

さて、11月。
いよいよ、バックカントリーの川が開く!

by nzsanpei | 2009-10-31 10:50 | 釣り日誌 | Comments(0)


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