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Angler's Notes from Southern Alps

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2016年 01月 19日

Sさん釣行記その5

Sさん釣行記その5_e0098148_1721830.jpg


荒々しくも美しい、1000m以上の標高の荒れた道の峠を越えてやっとたどり着く高原の川。
ちょっと、特別な川です。
これがSさんの釣行6日目の舞台。
バックカントリー・ライセンスがないと入ることができない、茶褐色の水が流れるこの川に来るのは、Sさんにとっては初めてのことです。
景色を見るだけでも満足。
そこで釣りができたなら、もっと満足。
釣れたら・・・。

前日までの釣りですっかり満足していたSさんだったので、あえて釣果は度外視で臨んだ、Sさんにとっての未開の地。ガイドの私としては、ヘビー・リピーターのSさんに常に新鮮な出会いを届けたい、との思いも込めて選んだ釣り場です。
川までの道中は、時々車を止めて風景を楽しみつつの移動。少し観光の気分かもしれません。

穏やかな日でした。
河原に到着して車のエンジンを切ったら、遠くでひばりのさえずりが聞こえて、そして静寂感に包まれます。

Sさん釣行記その5_e0098148_17134168.jpgたくさんの釣果は期待できない、という前提で訪れたはずでした。
でも釣りを始めた、車の目の前の瀬。
対岸のバンク際のポケットに、手前の流芯をラインコントロールでかわしながら大き目のドライフライを打ち込むと、いきなり水面が「モコッ!」と盛り上がってフライが消えました。
ストライク!

不意打ちにも近いいきなりのヒット。
それでも慌てることなく魚のダッシュをやり過ごし、ジャンプもやり過ごして無事にランディング。
この川独特の、背中の茶色が濃くて、少しだけイトウにも似た雰囲気のある60cmクラスのブラウンでした。
舞い上がっていたのは私の方だったのかも知れません。
だって、この川で釣りをして、この川の魚を手にすることは、私にとっては少し特別なことなのです。
魚を横たえて写真を撮って、流れに戻して、ふと気が付くと背後から呼びかける声。
気づかないうちに、停めた車の横にもう1台の4WDが停まっていて、そちらから近づいてくる別の釣り人がいました。

挨拶を交わして、たった今完結した釣りに賛辞をもらって(一部始終見ていたらしい)、話してみると・・・。
私「いたの?全然気が付かなかったよ。」
彼「見てたよ。ナイス・フィッシュ。」
私「釣りだよね。」
彼「そう。君たちの邪魔をする気はないよ。どんな予定かな?」
私「これから2~3kmは釣り上がるつもり。そっちは?」
彼「じゃあ、俺たちは釣り下るよ。下流に入ってもいいかな?」
私「もちろんだよ。この調子だと魚はけっこういるから、お互い楽しめそうだね。」
彼「そうだね。じゃあ、グッドラック!」
私「ありがとう。そっちもね。グッドラック!」
こう会話を交わした後、彼は車に戻り、同行者と下流に向かって歩き始めました。

これが、ニュージーランドの釣りのマナー。
同じアクセス・ポイントで他の釣り人に出会ったら、基本的には先行者が優先。
黙って背中を向けあうよりは、一言でも言葉を交わせば気持ちもいいもの。
できればお互いのプランを交流して、譲り合える部分は譲り合って、決してお互いの釣りの邪魔になるようなことがないように調整を図る。
絶対に、「頭はね」(先行者の先回りをする)をするようなことはしない。
こうすることで、気持ちよくお互い釣りができることになる、良いマナーです。

さて、釣りに戻ります。
1尾目を釣って、次に出会った広い瀬のヒラキに近いバンク際で、ライズを発見。
慎重に立ち位置を決めてフライをレーンに流すと、一発!
今度もグッドサイズの、少し銀色がかった見事なブラウン。
テンポよくいきなり2尾を手にしたのは、私にとっては全くの予想外のことでした。

その後もポツ、ポツと魚はいるものの、なかなか神経質で完璧に流したフライを拒否されたり、慎重にアプローチしてもキャストする前に警戒されてしまったり、の連続。
それでもさらに60cmクラス1尾を追加して、午前中の釣りは終了。
見事な結果でした。
Sさん、絶好調です。

Sさん釣行記その5_e0098148_1741920.jpg車に戻って、ランチを食べたら、上流に移動。
まるで日本の渓流でヤマメ釣りをするかのような流れが、午後のポイント。
まずはヤマメ釣り感覚で、ドライフライで瀬を叩いていくと、30cm弱くらいの小型が2尾。
こういう釣りも、たまには楽しいものです。
ニュージーランドでこの感覚は、なかなか味わうことができないので、とても新鮮。

やがて迎えた左の写真のポイント。
対岸寄りの頭だけ出した大岩のすぐ上流に、良型を発見。
水中のエサを積極的に食べているなと思ったら、時々ライズまでする活発な奴でした。
流すのは、難しい。
手前がとても速い流芯。
魚は対岸側の緩い流れの中にいて、そこからこちら側に流れが速度を上げながら吐き出してくる感じ。
そして背後は切り立った崖。
ギリギリまで近づいて、オフショルダーからひと振りでフライを投げ入れるのですが、なかなかフライがレーンをとらえませんでした。
10回以上も流した末に、やっとフライがその魚の狭いフィーディング・レーンをとらえたら、ぶわ~~っと浮き上がってきて、フライをひったくったのです。
お見事!
しかしそこからは魚の方がお見事。
こちらがあまり身動きが取れないことを知ってか知らずか、びゅーん!とダッシュしたかと思うと、華麗な跳躍を1回、2回と披露したら、見事にフックを吐き出すことに成功。
う~ん、残念。
そして、これで午後の釣りが終了。

素晴らしいロケーションの中、この日も釣果に恵まれて、素晴らしい1日となりました。
そしてその後もなかなか。

この川沿いを走る山道ですが、4WD愛好家にはよく知られたオフロード・ルート。
この川の源流まで何度も渡渉を繰り返して道は続き、やがて川が大地から生まれる場所を通り過ぎて、そして来た道とは逆側に峠を越えるのです。
悪天候ではまず走りきることはできないルートだけに、ワイルドで、とにかく美しい。
そんなオフロード・ドライブを楽しんだ帰り道でした。


ところで、この日Sさんがポツリと一言。
「昨日の釣り(Oreti Riverでの爆釣)が凄かったんだけど、真夏の釣りって条件に恵まれればあんな感じなんですよね?いやね、2月に1週間くらい休みを取ろうと思えば取れるかもしれないんだけど、どうですか?」
え?年末年始に釣りに来て、2月にも???
とは思いつつ、
「2月はいいですよ。私も多分空いている期間があったはず。でも、宿と飛行機がとれるかどうか。何せ中国の旧正月でたくさん観光客が来ますからね。」とまず返答。
すると、
「ちょっと、調べてみてもらえますか?」
とのこと。
もうSさんの頭の中では、前日の釣り終了後から、Oretiの爆釣がグルグルと自動再生状態なのでした。
「休み取れるかも?」とふと思ったら、どんどんそれが膨らんできたんだそうな。
さて、どうなるか!?

つづく

by nzsanpei | 2016-01-19 18:09 | 釣り日誌 | Comments(0)


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